終端同軸アンテナ

Terminated Coaxial Antenna

初公開: 07/May/2006, 最終更新: 26/Sep/2006

  1. はじめに
  2. アンテナ詳細
  3. 部品調達
  4. 使用
  5. 今後の予定
  6. 交信記録

はじめに

私は横着である. 移動運用などのときもアンテナ設置が面倒で, 結局モー ビルホイップで済ませてしまうことが多い. 一方, 元々の趣味の関係から, 広 帯域, 無調整で使えるアンテナもいくつか試してきたが, いずれも設置や運搬 に手間のかかるアンテナばかりで, なかなかお手軽には使えない.

進行波を利用するアンテナではエレメント長が波長に左右されないので, こ れが広帯域化のヒントになると思ってはいたが, うまく電波を放射してくれる ようなアンテナ形状はなかなか難しい. T2FD は比較的移動運用にはもってこ いだが, それでもその全長は 10m 程度にはなる. そこで, ここで紹介するア ンテナを考えてみた. うまくゆけばつぎのような特徴が期待できる.

一方, 予想される短所は,

である. ウェーブアンテナ(ビバレージアンテナ)の一種に属すると思われ るが, 同軸ケーブルを利用することにより設置, 調整を容易にできる.


アンテナ詳細

考え方は簡単である. 均一なインピーダンスをもつ伝送線路を純抵抗で終端 すればよい. 問題なのはどこから電波を放射するかであるが, これがこのア ンテナのカギである. 邪道な使い方かもしれないが, 同軸ケーブルの芯線と 外皮導体を, 線路の途中から逆に接続すればよいのではないかと思いついた. つまり, 同軸の芯線を GND とし, 外皮導体にて電界を放出するよう工夫でき ないかということである(Fig.1).

basic system
Fig.1: アンテナ基本構成

Fig.1 において, A, B の部分はどちらも同軸ケーブルだが, その役目が違 う. A の部分は通常の伝送線路である. B が電界の放出部分で, 途中から芯 線と外皮導体が逆に接続されている. 使用する同軸ケーブルのインピーダンス が 50 [Ω] なので, 右の終端抵抗は 50 [Ω] でよい. 同軸ケーブルは不平衡 な線路であり, 外皮導体からの電界放射を利用すれば, うまく動作するのでは ないかと考えられる. 終端抵抗器で電力を消費するので, 共振形のアンテナに はかなわないはずである.

実際に同軸ケーブルの外皮導体を放射器として利用するアンテナにコリニア アンテナがあるが, これは共振形のアンテナであり, 同軸の極性の反転を半波 長毎におこなっている. また, 路側ラジオなどにみられる漏洩同軸ケーブルが あるが, これは外皮導体にスロットを設け, 芯線からの放射を利用しているこ とから, 本アンテナとは全く異なることがわかる(終端しているのは同じ).


部品調達

同軸の極性反転は, 小箱にコネクタを 2 つつけて内部で接続すればよいので, 身近なもので間に合う. Fig.2 のような箱をつくればよい.

polar inveter
Fig.2: 極性反転箱

Fig.2 の極性反転箱のアンテナ給電部(Fig.2 点線 C 部)と終端部分さえう まくつくれば, 原理的には同軸ケーブルの使用上限周波数まで動作するはずで ある.

アンテナ部 B で放射しなかった電力は終端抵抗で消費される. 高周波まで利 用可能で, ある程度の消費電力まで耐えられる終端抵抗器を用いれば広帯域化 が可能なはずである. もちろん放熱は必要である. また, 実際の使用にあたっ て, アンテナ先端部に凝った物をつなげたくないし, なるべく小さく, 製作す る手間のかからない構造にしたい. そこで, 複数の抵抗器を並列にしたりす るのではなく, 単一で 50 [Ω], 移動運用で利用する電力(50 [W])に耐えられ る部品を捜した. 幸いにも(株)タ イセーの抵抗器 TDR-3060S50G をみつけ, これを利用することにした. 抵抗器の仕様は Tab.1, ヒートシンクの仕様は Tab.2 のとおり.

Tab.1: 終端抵抗器仕様
定格電力 [W]60
周波数範囲 [GHz]DC -- 2.5
インピーダンス [Ω]50
熱抵抗値 [℃/W]1.08
省略
Tab.2: ヒートシンク仕様
熱抵抗 [℃/W]0.63
大きさ [mm]H.40, W.150, L.250

使用

エレメント長 4[m] の試作品を実際に何回か使ってみた(Fig.3). VSWR だ け見ると HF から 50MHz まではフラットに 1.2 以下. 144MHz, 430MHz では 1.3 程度になった. 144MHz, 430MHz ではモービルホイップ程度の性能, 50MHz では非常に辛い, HF では全く取ってもらえないという結果となった. 交信結果だけから判断すると, ビバレージアンテナ同様に, 波長の 2 倍程度以 上のエレメント長が必要なようだ. 受信だけなら HF でも実用になりそうな感 触である. このあたりの特徴は T2FD と同様なのか. ちなみにこのアンテナ は有指向性である. しかしここまで長くなくては使えないとなると, 本来の目 的から外れてしまう.....

全景
(a)全景
アンテナ支柱
(b)アンテナ支柱
終端部分
(c)アンテナ先端終端部分
給電部
(d)給電部(極性反転箱)
Fig.3: 使用例

今後の予定


交信記録

このアンテナを使った 2006 年 9 月 26 日までの交信状況です. 50MHz 3 局, 140MHz 3 局, 430MHz 24 局, 1200MHz 1 局.

Tab.3: 交信記録
バンドHRSMRS先方移動地当局移動地
50MHz5955茨城県下妻市埼玉県比企郡鳩山町
50MHz5955神奈川県愛甲郡愛川町埼玉県比企郡鳩山町
50MHz5755千葉県長生郡長生村埼玉県比企郡ときがわ町堂平山
140MHz5559茨城県牛久市埼玉県比企郡鳩山町
140MHz5959茨城県土浦市埼玉県比企郡鳩山町
140MHz5959茨城県土浦市埼玉県比企郡鳩山町
430MHz5759さいたま市大宮区埼玉県比企郡ときがわ町堂平山
430MHz4553栃木県小山市埼玉県比企郡ときがわ町堂平山
430MHz5959東京都杉並区埼玉県比企郡ときがわ町堂平山
430MHz5959東京都青梅市埼玉県比企郡ときがわ町堂平山
430MHz5759埼玉県所沢市埼玉県比企郡ときがわ町堂平山
430MHz5759埼玉県鳩ヶ谷市埼玉県比企郡ときがわ町堂平山
430MHz5959北埼玉郡大利根町埼玉県比企郡ときがわ町堂平山
430MHz5959東京都三鷹市埼玉県比企郡ときがわ町堂平山
430MHz5959埼玉県狭山市埼玉県比企郡ときがわ町堂平山
430MHz5959埼玉県比企郡嵐山町埼玉県比企郡ときがわ町堂平山
430MHz5959茨城県牛久市埼玉県比企郡ときがわ町堂平山
430MHz5959東京都世田谷区埼玉県比企郡ときがわ町(堂平山)
430MHz5959埼玉県さいたま市見沼区埼玉県比企郡ときがわ町(堂平山)
430MHz5959東京都杉並区埼玉県比企郡ときがわ町(堂平山)
430MHz5959千葉県流山市埼玉県比企郡ときがわ町(堂平山)
430MHz5959千葉県市川市埼玉県比企郡ときがわ町(堂平山)
430MHz5959神奈川県横浜市神奈川区埼玉県比企郡ときがわ町(堂平山)
430MHz5959千葉県千葉市若葉区埼玉県比企郡ときがわ町(堂平山)
430MHz5959埼玉県所沢市埼玉県比企郡ときがわ町(堂平山)
430MHz5759東京都府中市埼玉県比企郡ときがわ町(堂平山)
430MHz5958栃木県佐野市埼玉県比企郡ときがわ町(堂平山)
430MHz5959東京都町田市埼玉県比企郡ときがわ町(堂平山)
430MHz4541東京都立川市埼玉県比企郡ときがわ町(堂平山)
430MHz5959埼玉県狭山市埼玉県比企郡ときがわ町(堂平山)
1200MHz5959千葉県千葉市稲毛区埼玉県比企郡ときがわ町(堂平山)

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